令和5年度税制改正により、インボイス制度について一部改正が行われます。
内容は「激変緩和措置」なので、残念ながら制度の廃止や施行延期ではありません。
中小企業向けに、期間限定での緩和措置が導入されるイメージです。
具体的には、以下の制度が導入されます。
①売上税額の2割納付
新たにインボイス発行事業者(つまり消費税を支払う事業者)になった場合、消費税の納税額を「売上税額の2割」にする軽減措置が導入されます。
本来は売上・仕入の全取引について消費税を集計しないと納税額は計算できないのですが、この軽減措置で、売上のみから消費税を計算することができるようになります。
3年間の期間限定です。
(例)
Aさんの1年間の収入等
・事業収入(サービス業売上880万円、経費550万円)
・給与収入 200万円
・有価証券の売却益(特定口座)100万円
⇒ 売上税額は、880万円に含まれる80万円なので、この2割⇒16万円を納税することになります。
(給与や有価証券の売却益には消費税が含まれないので計算しません)
➁1万円未満の少額取引についてのインボイス保存不要
課税売上高が1億円以下の事業者については、1万円未満の課税仕入れについて、インボイスの保存がなくても帳簿の保存(つまり今まで通りの方法)で仕入れ税額控除が認められます。
この1万円未満とは「税込み1万円未満」のことです。
また1商品ごとに1万円ではなく、1回の取引金額の合計額が1万円未満である必要があります。
こちらは6年間の期間限定となります。
(例)
税抜9000円(税込9900円の商品)⇒購入時のインボイスの保存不要
税抜き10000円(税込11000円の商品)⇒購入時のインボイスの保存必要
➂少額なインボイスの交付義務の免除
インボイス制度では、取引後に値引きや返品等があった場合でも「返還インボイス」を発行して相手方に渡す必要があります。
実務的には、売上金額の入金時に振込手数料が控除されて入金されるケースも該当します。
この取引の都度に返還インボイスを発行することは現実的に難しいことから、
1万円未満の返還インボイスについては交付・保存が不要となりました。
この制度は事業者の売上規模に制限がないため、課税売上高1億円超の事業者でも適用できます。
また①➁とは違い、期間の限定もありません。
④適格請求書発行事業者への登録の柔軟化
適格請求書発行事業者への登録は令和5年3月31日までが原則でした。
改正前においても、令和5年3月31日以降の登録が実務的に可能でしたが、改正後はそれがより明確になりました。
ただし登録申請書を遡って提出することができない点は変わりがないため、令和5年9月30日までには確実に意思決定をしておく必要があります。